農業問題研究会

令和5年度活動報告

日本農民論

ら農問研は或る統計資料より、東金市の離農状況を調査した。そこから食糧自給の逼迫を推論することとした。筆者はかつて農林水産省関東農政局の農林統計調査官を15年程在職した経験上、九十九里沿岸の農村の崩壊は予測していた。それは平成に入ると急速に進行した。その実態を上げてみると、(1)捨田、捨畑の拡大。(2)農村人口の減少。(3)山村の崩壊(水源地での荒廃地の増大)。(4)治山、治水、農業用水地の組合経営の崩壊。農村共同体の分断。①東金市自治消防団の崩壊、各部落の納税組合崩壊における共同財源の枯渇。(5)各種団体(農協、地方自治、共済組合、土地改良、農業委員、実行組合長、福祉協議会関連等)の役員のなり手不足。(6)寺宮関連の役員不足。(7)五軒組のきずなの崩壊。五軒組の歴史は、いつ頃組織されたかその実態は不明。徳川の鷹狩りの時、秀吉の太閤検地の時、源氏の旗揚げ、天智天皇の大宝律令に依る。等々諸説紛々にしてその時期確定ならず。

Ⅱ―(1)農産物の不等価交換

農産物の不等価交換とは、俗に云う「売るものは安く買うものは高い」つまりこれは資本家同盟による農産物の買い叩きを経済学で理論化した用語であって社会科学の基本である。

(2)財界(資本原理主義者同盟)主導による戦後農政の総決算

 グローバリゼーションは一面では地球を一つにしたいという願望ではあったが世界の先進国の集まっている欧米から発案された、旧植民地、或いは敗戦国を世界市場に引き出し、その国の社会的、或いは経済的、とどのつまりは後進国の分断、貧乏化、飢餓を増大する結果を生じせしめるに至った。特筆しなければならぬことは、グローバル化はアメリカニゼーション、アメリカ中心主義の世界貿易市場が形成されたことである。このことの弊害は、地球上の全てのものを強引に商品化し歯止めなき自由競争による弱肉強食を押しつけ結果的に各国、各地域の農産物貿易収支の格差拡大をもたらしたことである。

Ⅲ―(1)日米農産物問題(日米安保に潜むもの)

 日本の食糧問題について、WT0やFTAを通じて現行の「基本計画の見直し」を迫っているのが財界のシンクタンクといわれる「日本経済調査協議会」である。極論すれば彼等は欧米列強国に対し日本の農産物を「生きにえ」にして他産業の独占企業の商品を外国に売って企業利益を得るという農民の主権侵害ともとれる貿易を行っている。今問題になっている自民党のキックバック事件もこの貿易構造と無縁ではあるまい。政治献金は政権からの見返りの反映としか考えられない。政治とカネの疑惑は政治献金が諸悪の根源といえる。出来秋に農民が米屋に納品する時に米屋から聞く言葉は、「自民党は選挙が近くなってくると献金を要請してくる」という嘆きの声である。農民に云わせればその分米屋にも政権からのメリットが与えられるからだろう、と思うのが普通である。

Ⅳ―(1)日本のコメ政策の原点を振り返る

(1)―(イ)古代律令制の農村支配

古代の地方制度は天智、天武、持統天皇によって律令制度は定着する。各地方には国司、郡司が配属され朝廷からは各地に屯田兵が着任し、彼らは農村文化を広める為に農村に学校(塾)を開き学問を教えた。既に前号にて上総国を統治したのは万葉歌人の山辺赤人であることは検証した。そして山武郡は、山辺赤人の地方官の姓をとって山武郡と命名したことも前回述べた。赤人の行政手腕は大宝律令を地域の実情を調査して着実に行ったことである。例えば ㋑ムラの編成 ㋺戸の編成 ㋩一里毎に村をつくる ㊁貢納(年貢払) ㋭出挙(税金払) ㋬労働の徴発 ㋣徴兵制 ㋠戸籍簿の作成。郡司職というのは大宝律令では定年制が無く普通は三年交代であった。日本農業は遣隋、遣唐使らによって唐の文化を吸収しムラつくりの法の支配が制度化された。かようなムラの歴史を研究してみて主食の自給に感謝すべきであろう。

 

参考文献

・食料農業農村白書(2023)農林水産省編

・イネの歴史 佐藤洋一郎編

・食料農業農村基本計画の見直しを切る 田代洋一著

・古代史の正体 新潮社

・改憲の論点 集英社新書

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